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3 冠詞と名詞の格変化 前半

1 名詞の性と複数形


ドイツ語の名詞には男性・中性・女性という文法上の性の区別があり、名詞の性によって冠詞の形が異なります。複数形では性の区別はありません。
名詞の性を知る完全な規則はありません。名詞の性をはっきりと示すのは1格(主語の格[…])の定冠詞です。男性名詞の1格の定冠詞は der、中性名詞は das、女性名詞は die です。名詞とその定冠詞をワンセットにして覚えて下さい。





★  名詞の代わりに、人称代名詞を使う時には、人・物事を問わず、男性名詞の場合は er、女性名詞の場合は sie、中性名詞の場合は es を使います。
„Wo ist der Tisch?" - „Er ist hier.“ 「その机はどこにありますか?」「(それは)ここにあります。」
„Wo ist das Kind?" - „Es ist hier.“ 「その子供はどこにいますか?」「(それは)ここにいます。」
„Wo ist die Tür?" - „Sie ist hier.“ 「そのドアはどこにありますか?」「(それは)ここにあります。」

★  複数名詞の場合は、3人称複数の sie を使います。
„Wo sind die Tische?" - „Sie sind hier.“ 「その机はどこにありますか?」「(それは)ここにあります。」





名詞の複数形には、5つのタイプがあります。


名詞の性の覚え方☆人間の場合は実際の性と同じ(ただし –chen, –leinに終わる語は中性名詞)。 
☆小さいもの、可愛らしいものを表わす –chen / –lein で終わる語は、すべて中性名詞。 
☆ –er で終わる「⋯する人」「⋯するための道具」は、すべて男性名詞
☆ –in で終わる人を表わす名詞は、すべて女性名詞。 
☆ –e で終わる語は、ほとんどが女性名詞
☆外来語は中性名詞が多い

2 冠詞と冠詞類

① 定冠詞(英 the

           der(男性)、das(中性)、die(女性)、die(複数) 

 定冠詞は d の部分が共通(=語幹)です。定冠詞は、話し手と聞き手の間で何を指すか分かっているものや人に対して使います。


 定冠詞類

 dieser この(英 this welcher どの(英 which jeder 各々の(英 every aller すべての(英 all

 ★これらは定冠詞とほとんど同じ変化をします。辞書にはここに挙げた(-er という語尾のついた)男性1格の形で載っていますが、名詞の性に合わせて語尾が変わります。


           dieser(男性)、dieses(中性)、diese(女性)、diese(複数)

 ★ dieser は dies の部分が共通(=語幹)です。定冠詞の語尾と微妙に違うところがありますので注意して下さい。

 ★ welcherjederaller も同じ変化です。これらをまとめて dieser 型冠詞類と呼びます。



② 不定冠詞(英 a/an

 不定冠詞は男性と中性が同じです。不定冠詞は英語の a / an にあたるもので、英語と同じく「1つの」という意味を持つので、複数形はありません。

      ein(男性)、ein(中性)、eine(女性)

 不定冠詞は ein の部分が共通(=語幹)です。不定冠詞は「ある…、1つの…」という不特定のものや人に対して使います。


 不定冠詞類

 否定冠詞 kein(英 noと所有冠詞(英 my, your, ...の変化は、不定冠詞とまったく同じです。

 所有冠詞は

      kein(男性)、kein(中性)、keine(女性)、keine(複数)

      mein(男性)、mein(中性)、meine(女性)meine(複数)

      Ihr(男性)、Ihr(中性)、Ihre(女性)Ihre(複数)

 ★ kein は「ひとつも…ない」という否定を表わす冠詞です。不定冠詞とは違って複数形もあります。否定冠詞 kein は不定冠詞のついた名詞と無冠詞の名詞の否定です。


 ★ 否定冠詞所有冠詞をまとめて mein 型冠詞類と呼びます。


3 格変化

 名詞や代名詞の文中での役割(=主語なのか、目的語なのか…)を示すのが「格」です。ドイツ語には1格 (主格)、2格(所有格)、3格 (間接目的格)、4格 (直接目的格という4つの格があります。日本語では名詞の役割を「は・の・に・を」などの助詞(=格助詞)を名詞の後につけて示すのに対して、ドイツ語では名詞の前に置く冠詞で示します。



人称代名詞 




★ 人称代名詞にも格変化があります。

★ 3人称単数の er, sie, es, は、英語の heshe, it ですが、英語の he, she は人にしか使わず、物は全て it で受けるのに対して、ドイツ語の er, sie, es は人だけでなく物でも男性名詞は er、女性名詞は sie で受けます。したがって er = 彼、sie = 彼女、とは限りませんので注意して下さい。


4 名詞・代名詞の1格(主格)





1格の用法


 ① 主語になる


   主語は必ず1格です。日本語の格助詞「…は/が」に対応します。





② 述語名詞になる

   sein (…である)  werden (…になる) のような動詞の補語になるのも1格です。




 


5 名詞・代名詞の4格(直接目的格)




★ 1格と4格の形が異なるのは男性だけ。中性、女性、複数は1格と4格は常に同じ形。




★ 3人称の人称代名詞も1格と4格の形が異なるのは男性だけ。


4格の用法


① 他動詞の直接目的語になる

  日本語の格助詞「…を」に対応し、suchen (捜す), haben (持っている), kaufen (買う), finden (見つける), lesen (読む), trinken (飲む) などの動詞の直接目的語として用いられます。





★ ドイツ語では4格なのに日本語では「…に」になる動詞が少しだけあります。

 fragen 質問する

 Er fragt den Lehrer.                                       彼は先生に質問する。
        ↖︎ドイツ語では「先生を質問する」



② 前置詞の目的語になる

   für, ohne など「4格と結びつく前置詞」や in, auf などの「3格または4格と結びつく前置詞」の目的語になります。日本語の「…を」には対応しません




 


③ 副詞的4格

 名詞を(目的語ではないのに)4格にすることで、前置詞なしで副詞的に使うことができます。主に時間関係の決まった言い回しなので、そのまま覚えておきましょう。