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2.3 文献資料

資料調査というと本や新聞雑誌などから情報を得ることをまず考える人が多いでしょう。もちろん、いまや、インターネットを通じて入手できる情報が多くなり、伝統的な本や新聞雑誌の情報も紙媒体で読むだけではなく、インターネットで検索してコンピュータの画面で読むということも多いでしょう。この節では、紙媒体と電子媒体両方の広い意味での文献資料を扱います。

文献資料から得られる情報の種類としては次のようなものがあります。(1)ニュース記事、日誌、証言録、調査に基づく報告書、等に見られる事実の記録。個々の事実ではなくそれを数値化した統計資料。出来事の記録もあれば、人物の紹介、場所・建物・動植物の描写もあるでしょう。(2)料理のレシピや機器の操作マニュアルのような手順説明。法律の条文、規則、各種手続きの説明文(たとえば携帯電話の申し込み方法)など。(3)筆者の意見、主張、感想。一言の簡単な感想や意見もあれば、複雑な議論が長い文章になっているものもあるでしょう。(4)研究成果としてのデータの分析、解釈、及びそれに基づく考察。広い意味では筆者の意見ですが、「研究論文」として単なる意見や感想とは違った価値が置かれます。(5)物語、小説、詩歌などの文芸作品。これらは内容とともに、表現そのものやどのように表現されているかが重要になります。

このような情報が収録されている媒体にはどんなものがあるでしょうか。書籍(本)には、それぞれ独立した単行本、全集のようなものがあります。通常の書籍以外にも、教科書、辞書、事典、年鑑といった名称で呼ばれる資料もあるでしょう。新聞雑誌などの定期刊行物には、日刊、週刊、月間、季刊、年刊、といろいろあります。単行本であれ定期刊行物であれ、通常の出版社から発行されるものもあれば、政府機関や企業などが発行する報告書やパンフレットのようなものもあります。そして、これらのものは現代では、すべて紙媒体以外に、WebサイトやCD-ROM、DVDのような電子媒体で提供される可能性があります。さらに、電子媒体でしか公開されない資料もあります。

このような資料はどうやって探せばいいでしょうか。いきなり、インターネットの検索エンジンにトピックに関係する単語を入れたり、書店や図書館の書棚に行って本を手にとって見る、という方法も全く役に立たないわけではありませんが、ここではもう少し体系的な方法を考えてみましょう。

(1)トピックの概要を把握する。関連分野の教科書や事典類によって、詳細ではないが一般的な情報を得ることができます。どこから手をつけていいかわからない場合は、百科事典が第一歩となるでしょう。

(2)資料リストを作る。図書館のカタログ、索引誌・抄録誌、データベース、インターネットの検索エンジン、などを用いて関連する文献資料のリストを作ります。読んでいる本や記事などに出てくる文献の中からも役に立ちそうなものが出てくるでしょう。こういった芋づる式の情報もなかなか無視できません。

さまざまなデータベースの検索方法は、ここでは省略します。図書館のホームページから利用可能な検索方法について試してみるのもいいでしょう。また、図書館が開催する利用説明会や講習会に参加するのもいいでしょう。グループで申し込めば、要望に応じた内容で教えてもらえる「オンデマンド講習会」を利用するのもいいでしょう。

図書館のカタログもOPAC等の名称で呼ばれるオンラインのデータベース化されていることが多く、紙のカードをめくって探すということはあまりないかもしれません。Googleのような一般的な検索エンジンを使うといろいろな種類の資料が混在して出てきます。文献リストを作ったり、現物を入手する(本文を読む)ためには、単行本と定期刊行物中の記事(新聞雑誌の記事や季刊学術雑誌掲載の論文など)は、その違いを理解しておいたほうがいいでしょう。

2.3.1. 本を探してみる

九州大学附属図書館のOPACで、「地球温暖化」について文献資料を探そうとして、書名(「詳細検索画面」の「タイトル・ワード」欄に入力)に「地球温暖化」を含む資料を検索します。すると18 件ヒットしました(図1、2010 年3 月17 日検索)。

検索結果は図2 のように表示されます。

1 番目の資料の詳細を見てみましょう(図3)

図3 の画面からこの本の書誌情報を確認してみましょう。

本の題名: 『地すべり・山火事・砂嵐』

著者・編者名:「 タイム」編集部(編)

翻訳者名: 鈴木南日子

原書名: Time: nature’s extremes

出版場所: 東京

出版社名: ゆまに書房

発行時期: 2009 年1 月

総ページ数: 28 ページ(薄い冊子であることがわかります。)

この本が九州大学のどこにあるかは、画面の下部に表示されています。「筑紫図書館 選書コーナー」にあることがわかりますので、筑紫図書館に行けば図書の閲覧や貸出が可能です。また、九州大学の学生・教職員であれば(学生IDまたは九州大学全学共通ID (SSO- KID)が必要)、画面右下の「予約・取寄」ボタンで希望する図書館へ図書を取り寄せることも可能です。(なお、学内にない資料は、相互利用制度を利用して他の図書館から取り寄せることもできます(有料)。詳細は図書館に問い合わせてください。)

また出版社のWebサイト(http://www.yumani.co.jp/)から検索すると、次のような内容であることがわかります。

●《地すべり》泥の激流。地すべりはいかに有能な殺し屋か1985 年、コロンビアの人々は恐怖の体験から学んだ。●《なだれ》白い死神。なだれは雪と重力と急な坂さえあればおこり、恐ろしい被害をもたらすことも。●《熱帯雨林》失われた楽園。地球の肺であり、さまざまな生きものが暮らす温室でもある雨林が、いま危機に直面している。●《山火事》森林火災最前線。干ばつにつきもので、自然界でもとりわけやっかいな予測不能の災害、森林火災。●《砂嵐》砂の悪魔。アメリカのダストボウルからサハラ砂漠の砂嵐まで、またしても表土が風と共に去って行く。(http://www.yumani.co.jp/np/isbn/9784843330357 2010 年3 月17 日閲覧)

原著についても調べてみると、Time: Nature’s Extremesというシリーズの中の1 冊で、この巻の題名はInside the Great Natural Disasters That Shape Life on Earth であることがわかります。さらに本文の一部をネット上で無料で読める可能性として、Amazon.co.jp が提供する「なか見! 検索」や「Googleブックス」のようなサービスに収録されている本であれば、本文ページの一部を見たり、本の中を検索し該当ページを読むことができます。今回たまたま取り上げた『地すべり・山火事・砂嵐』は本文がそういったサービスに収録されていませんので、図書館を通じて読むか、購入するかということになります。

OPACの検索で、書名以外の書誌情報にも「地球温暖化」が含まれるように「フリーワード」欄に入力して検索すると、151 件ヒットしました。図1 の画面では、「資料区分」が「全資料」になっていました。これを「雑誌」のみをチェックして検索すると、何もヒットしません。これは、地球温暖化に関する雑誌記事がない、ということではありません。

2.3.2. 雑誌記事や論文を探してみる

雑誌記事を探すには、『週刊朝日』『中央公論』『日経サイエンス』といった雑誌の書名ではなく、その中にある記事や論文の題名やキーワードを検索する必要があります。そのような検索を行うデータベースの代表的なものとして、日本国内ではCiNii(サイニィ)(国立情報学研究所 http://ci.nii.ac.jp/)があります。「詳細検索」の画面で、「論文名」に「地球温暖化」と入れて検索すると、7,155 件がヒットしました(図4、2010 年3 月17 日検索)。

図4 の最初の記事の書誌情報を確認してみましょう。

記事(論文)の題名:「 Climategate(クライメートゲート)事件─地球温暖化説の捏造疑惑」

著者名:渡辺 正

掲載誌名等: 『化学』

巻・号・ページ: 第65 巻3 号(通巻706 号)34 ページから39 ページにこの記事がある。

発行時期: 2010 年3 月

出版社名: 化学同人(図4 の画面では記載されていませんが、記事名をクリックすると詳細情報があり、そこに記載されています。)

本文を読むにはOPACを用いて『化学』第65 巻3 号の所蔵を探します。ここからは、本を探すのと同じような方法になり、学内複数の所蔵があり、伊都図書館にもあることがわかります。また、この『化学』の記事は、九州大学図書館を通じてはオンラインで読むことはできませんので、他の方法を探してみましょう。結局、出版社のサイト(化学同人http://www.kagakudojin.co.jp/)において1 年分の記事のうちの多くを「電子ブック」という形態でオンラインで読むことができるようになっていて、当該の記事を読むことができました(2010 年3 月17 日閲覧)。ただし、文章のコピーやPDFファイルでのダウンロードはできません。

電子媒体で読むことができる資料に限って検索するにはCiNiiの「詳細検索」の下の欄を「すべて」から「CiNiiに本文あり、または連携サービスへのリンクあり」にチェックを変更して検索します。すると538 件がヒットしました(図5、2010 年3 月17 日検索)。なお、これは九州大学の学内LANに接続されたコンピュータを利用するか学外からIDとパスワードで「どこでもきゅうと」という図書館のサービスにアクセスした場合の検索結果画面です[注1]。このうち多くの資料はCiNiiからPDFファイルで読むことができます[注2]。「機関リポジトリ」のボタンは大学などが電子媒体で公開している資料にリンクされています。「Kyushu Univ. Library LinQ」では学内の電子媒体、紙媒体の資料の検索を行うことができます。学内でオンラインで本文を読むことができない場合は「Full-text is NOT available online at Kyushu University. 」という表示があります[注3]。

図書や論文など学術的資料に限ってWebを検索するサービスにGoogle Scholar があります。九州大学のLinQと連携していますので、学内からオンラインで本文が入手可能な場合は本文へのリンクが表示されます。検索の範囲を一般的なWeb上の情報にまで広げる場合は通常のGoogleを利用するというように、使い分けるといいでしょう。どちらの場合も、1 単語だけではなく、複数の単語やフレーズを入力すると、複数の単語が同じページのどこにあるかに関係なく検索されますが、フレーズをそのまま検索する場合は、引用符 “ ”(ダブルクォーテーションマーク)の中に入れます。たとえば、「九州における地球温暖化対策」と検索すると、一致する日本語のページ約 617,000 件となりますが、「“ 九州における地球温暖化対策”」と検索すると、日本語のページ は4 件に絞られます(2010 年3 月17 日)[注4]。その他、検索の条件を指定するには、「検索オプション」のページを利用するといいでしょう。

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[1] 通常の方法で自宅のパソコンなどからアクセスした場合は、表示や利用できる本文の範囲が異なります。図書館では通常は有料のデータベースを機関として購入することによって、学生・教職員に多数の資料を無料でアクセスできるようにしていますので、これを利用しないと「高い授業料を払っているのに、大学のサービスが悪い」と文句を言いかねませんね。 [2] 2010 年10 月にインターフェースの変更があり、「CiNii PDF」のボタンはさらに、有料か無料かなどがわかるような表示になっています。 [3] 少しまぎらわしいですが、LinQのページからCiNiiが提供する本文にたどりつくことができます。 [4] この機能を使うと、学生のレポートや作文の中に含まれるコピーペーストによる盗用を発見することも容易にできます。引用符の中に入れず自分が書いた地の文としているもので、疑わしい部分があるとフレーズ検索により出所が分かることがよくあります。手書きでレポートを書いていた時代では、本のページを丸写ししても、書き写すことによって労力もかかりますし、少しは勉強になったかもしれませんが、「コピペ」では労力も勉強も限りなくゼロに近くなります。