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2.5 資料の記録

資料を入手したら、その情報を正確に記録、保存しておかなければなりません。記録がなければ、個人的な知識としてその証拠価値は大きく下がってしまいます。記録のポイントは、他の人が確認できるかどうか、つまり検証可能性です。実際に確認するかどうかは別として、確認しようと思えばできる、ということが大切です。確認しようがなければ、「私は知っている」といくら言っても、聞き手に「本当なの?」と疑われた時、「私の言うことを信じてよ」と言う以外にどうしようもありません。

文献資料の記録

文献資料の記録は、本文の記録と出典情報の記録からなります。本文は、手書きで引用カードやノートに書いたり、パソコンにタイプ入力する場合は、正確に書き写したり入力したりすることです。コピーを取ったり、PDFなどの電子ファイルを保存したり紙に印刷して記録することもできます。実際に発表の時に引用したり紹介するのは短い文章であったとしても、その前後の文脈とともに記録しておく必要がありますし、定期刊行物の記事や論文は、1 件まるごと保存したりコピーしたりしておくほうがいいでしょう。特にWebにある情報は、いつ消滅するかわかりません。必ずファイルに保存したりプリントしたりしておきましょう。消滅してしまったWebサイトの情報は、比較的最近のものはGoogleのキャッシュなどで見ることができる場合もあります。もっと遡れる可能性があるのは、Internet Archive(http://www.archive.org/)というWebサイトを記録保存しているサイトです。たとえば九州大学のホームページを1996 年11 月9 日まで遡ることができます(図6)。

出典情報の記録

文献資料を提示した場合、他の人が調べようと思えば内容を確認できるように書誌情報を提供します。引用文や参照情報が掲載されていた本、雑誌記事・論文、Webサイトを特定し、さらにページなどを特定します。たとえば、先ほどの渡辺の記事から、図7 のような文章を記録したとしましょう。

このような引用文は引用カードに1 件ずつ記録したり、ノートに書いたり、コンピューターのファイルに記録したりします。(A)は出典の書誌情報。(B)は著者名の読み、所属、資格など[注5]。(C)はこの引用文のあるページ(r は1 ページ2 段組みの右側ということです)。(D) の「     」内は直接引用です。引用文に続く(渡辺2010, p. 34)というのは、通常プレゼンテーションなどで引用する際に出典を示すための、スライドや本文中での表記です。渡辺という著者の2010 年の文献の中の34 ページに引用箇所が掲載されている、という意味です。対応する「渡辺2010」の文献は文献リストにおいて完全な書誌情報を示します。これは、社会科学系の論文などでよく用いられる方法で、理科系の論文では文献リストの各文献に番号が振られ、本文中ではその番号のみが示される方法が多いようです。(E) は記録者の注釈で、CRUとGISSの頭文字で表された機関名の原語表記と日本語名称をメモしています。

資料(文献)リスト

調べ物をしているうちに、多様な資料が溜まってくるかもしれません。引用カード、ノート、複写コピー、保存したファイル、等々。それぞれに出典を明記しておくとともに、収集した資料の一覧表を作っておくといいでしょう。文献リストを管理する専用のソフトなどもあります。また、九州大学の図書館では、RefWorksというWeb上で文献リストを管理したり共有したりするシステムを提供しています。

リストに掲載する情報の形式は次のようなものになります。

単行本(翻訳書)の場合

「タイム」編集部(編).鈴木南日子(訳).2009.『 地すべり・山火事・砂嵐』東京:ゆまに書房.原書名: Time: nature’s extremes: Inside the Great Natural Disasters That Shape Life on Earth. Time, 2006.

雑誌記事・論文(Webで閲覧)の場合

渡辺 正. 2010.「Climategateクライメートゲート事件―地球温暖化説の捏造疑惑」『化学』65巻3 号、pp. 34-39. オンライン版http://www.kagakudojin.co.jp/kagaku/201003.html?201004&3. 閲覧日:2010 年3 月18 日.

Webページの場合

著作権法第35条ガイドライン協議会. 2004. 学校その他の教育機関における著作物の複製等に関するガイドライン. Webページ http://www.jbpa.or.jp/35-guideline.htm. 閲覧日:2010 年3 月18日.

独自調査の記録

独自に行った調査においても、他の人が確認できる可能性を確保しましょう。観察をした場所、時間、方法など正確に記録しておきましょう。アンケート用紙や得られた回答の保存も忘れないようにしましょう。