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1.2 プレゼンテーションの目的

何のためにプレゼンテーションをするのでしょうか。授業であれば「単位をもらうため」とか、コンテストであれば「優勝して副賞をもらうため」という答えも返ってきそうですが、それは横に置いておきます。プレゼンテーションや人前で行うスピーチなどにはいくつかの目的を考えることができます。トピックを選ぶ時には、そういった目的を考えることが役に立ちます。ここでは、(1)情報、(2)説得、(3)感動、という三つに大きく分けてみます。

(1)情報提供のプレゼンテーション

自分の知っている知識や情報収集によって得た情報を、適切に整理して、わかりやすく発表する必要がある機会は多いでしょう。福岡市の交通システムについて整理して発表する、地震による津波発生のメカニズムを説明する、折り紙で鶴を折る手順を実際に見せる、というのはみな、情報提供が目的です。

情報提供は、聴衆が知らないこと、誤解していることについて、正確な情報を伝達することにあります。あなたのプレゼンテーションによって、聴衆が今まで知らなかった情報を理解したり、間違った知識を訂正できたり、今までできなかった作業ができるようになれば、情報提供のプレゼンテーションの目的は達せられます。

目的達成に程度差もあります。福岡市の交通システムについて説明しようとして、日本一とも言われる西鉄バスの複雑な路線をすべて理解してもらうのは不可能です。主要路線だけを取り上げて全体を概観するか、一地域だけに絞って詳細を説明することも必要でしょう。

(2)説得のプレゼンテーション

聴衆の認識、態度、行動に何らかの変化をもたらすことを目的とするのは、説得のプレゼンテーションです。認識の変化とは、聴衆の持っていた認識とは異なる自分の主張を受け入れてもらうことです。たとえば、いままで、二酸化炭素ガスはごくありふれた気体で特に環境に有害なものではないと思っていた人々に対して、地球の上空にできた二酸化炭素ガスの層が温室効果によって地球温暖化をもたらすという環境への悪影響を納得してもらうことがあります。態度とは、心理学的には表面に現れた行動そのものではなく、人々の発言や行動の背後にある考え方の傾向です。いままで、石炭や石油を燃やしてエネルギーを得ることは人間生活を便利にするものであり特に悪いことではないと思っていた人々に対して、化石燃料は限られた資源であり、燃やすことによって環境に有害な二酸化炭素を発生するので、その使用を制限するという「態度」を持つことを求めるプレゼンテーションが考えられます。さらに、実際の行動を起こしたり(いままでの行動を止めたり)、といったこと求めるプレゼンテーションもあります。化石燃料の使用を減らすために、聴衆が直接家庭の冷暖房の温度を調整することを求めたり、日本が化石燃料への依存を減らすために太陽光や地熱など自然エネルギーによる発電を進める政策をとることを提唱することが、行動の変化を求めるプレゼンテーションになります。

(3)感動のプレゼンテーション

聴衆を喜ばせたり、悲しませたり、といった感動や感情を引き起こすことを目的とするプレゼンテーションがあります。貧しい家庭に生まれた友人が、新聞配達をしながら野球部の活動と勉学を両立させ離島の地域医療に貢献するという夢を実現させる第一歩として医学部に合格した感動の物語もあるでしょう。いろいろな動物の愉快なしぐさに擬人化した解釈を加えて説明し、聴衆の笑いを誘うプレゼンテーションもあるでしょう。大地震とその後の津波の被害にあった人々の惨状を紹介して悲しみの感情や同情心を呼び起こすとともに、政府の無策と腐敗により救援物資が被災者に届かないことへの怒りを呼ぶプレゼンテーションもできるでしょう。