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言語選択

3.1 全体の構成

日本の学校で教育を受けた人なら、作文や小論文の指導で、起承転結が大切です、と教えられたことがあるでしょう。起承転結というのは文章の構成方法の一つです。もともと漢詩の構成方法でしたが、文章構成一般を指しても使われます((『大辞林 第二版』 三省堂、オンライン版http://www.excite.co.jp/)。論文や比較的フォーマルなプレゼンテーションなどに用いる際は、少し注意が必要です。そういった場合、「序論─本論─結論」という構成のほうが望ましいでしょう。 起承転結を論文などに当てはめると、「起」はトピックを提示して(○○について述べます)、「承」はトピックを受けて発展させ論じ、「転」では別の観点を導入し、「結」では二つの流れをうまく結び付けて結論を導く、というような構成になるでしょうか。

一方、「序論─本論─結論」の構成は、次のようになります。序論では読者や聴衆の興味や注意をトピックに向けさせ、主題文を提示します。さらに、本論でどのような順序で話を進めるかの予告を行います。本論では、予告した順序に従って主題文で表した内容の説明やその主張の論証を進めます。結論では、本論で行った説明や論証を振り返り、主題文の内容を繰り返し、最後に聴衆の心に残る言葉で締めくくります。

二つの構成の違いは、最初にどの程度、主題文(結論となる主張)や説明・論証の順序を予告しておくかと、最後になって結論を導くのかどうか、という点にあります。どちらが絶対的に優れているということはありません。起承転結は詩の構成法を起源とすることからもわかるように、比較的情緒的、芸術的な構成方法と言えるでしょう。序論―本論―結論という構成方法は、より実務的なプレゼンテーション・文書や研究発表・論文に適した構成方法でしょう。

日本では序論=「起」、本論=「承」+「転」、結論=「結」、と考える場合もあるようですが、英語の学術的な論文や発表の構成法を「起承転結」でいいと考えると、誤解が生じそうです。まず、「起」では、トピック(何について話をするか)を宣言することはあっても、最終的に導く結論や主張は伏せておくのが通例です。一方、英語の論文の序論では、主題文(導かれる結論)を明示し、さらに説明や論証の順序も予告することを求めます。次に、「承」「転」では二つの観点や話の流れの間の関係が明示されず一種のサスペンスを生むような仕掛けであったり、「こういう観点もあるけれども、こういう観点もある」というような書き手の思考過程をそのまま提示するものであったりします。英語の「本論」では予告通りに整理された論証を示すことが理想とされます。「結」においては、初めて書き手の主張が明かされることもありますが、英語では論文のような硬い文章において「結論」で新たに重要な主張を示すことは推奨されません。

このような話の構成の文化的な違いは、日英語間だけではなく、他の言語文化の間でも問題になりますので、外国語でプレゼンテーションをする際は注意が必要です。