主語に合わせて人称変化した動詞の形が「定形」(主語が定まった形)です。ドイツ語では動詞の定形は文頭から2番目に置かれます*。
*疑問詞のない疑問文と命令形では動詞は1番目、副文では文末。
★ ja, nein や und(英 and), aber(英 but)などの並列接続詞は文の語順に影響しません(0番の扱い)。
●文頭にはテーマとなる語を置く
Er wohnt jetzt in Fukuoka. 彼は今、福岡に住んでいます。
Jetzt wohnt er in Fukuoka. 今は彼は福岡に住んでいます。
In Fukuoka wohnt er jetzt. 福岡に彼は今、住んでいます。
★主語以外の語を文頭に置くと、文のニュアンスが変わります。
●疑問文の語順は不自由
ドイツ語の疑問文は[動詞+主語+…?]と[疑問詞+動詞+主語+…?]の2つの形だけです。だから日本語の疑問文のようにテーマとなる語を文頭に置くことはできません。
a) 彼女は上手にピアノを弾くのですか?(普通の疑問文)
a’) Spielt sie gut Klavier?
b) ピアノを彼女は上手に弾くのですか?(「ピアノ」がテーマ)
b’) Klavier spielt sie gut? ←ドイツ語では Klavier を文頭に置いた疑問文は作れません。
英語:動詞と密接に結びつく要素は動詞の直後に置かれる。 英語とドイツ語の
ドイツ語:動詞と密接に結びつく要素は文末に置かれる。 基本的特徴
ドイツ語では、動詞の定形と文末に置かれた要素が枠を作り、文頭の文成分以外はすべてこの枠の中に入るので、この形を枠構造といいます。
英語の文末:today, tomorrow, every morning ←あまり重要でない語
ドイツ語の文末:直接目的語、本動詞、分離前つづり ←重要な語!
★「文末」はドイツ語ではとても大事な場所です。
不定句とは、動詞の不定形に目的語などがついたものです。例えば spielen(英 play)に目的語 Tennis をつけた Tennis spielen(テニスをする)が不定句です。Tennis の他に副詞の heute(今日)や前置詞句の mit Monika (モニカと一緒に)をつけると heute mit Monika Tennis spielen (今日モニカとテニスをする)という不定句になります。
日本語と全く同じ順番に並んでいますね。実はドイツ語の不定句は動詞の不定形が最後に置かれ、その他の語句の順序も日本語と全く同じになります。
不定句は文を作るための部品・材料です。文には主語が必要ですが、heute mit Monika Tennis spielen には主語がないので、まだ文ではありません。主語を加え、動詞を人称変化させて2番目に置くと文になります。「彼」を主語にして、この不定句から文を作ってみましょう。
ポイント ドイツ語の語順は動詞が2番目に来ることを除けば日本語と全く同じ。
不定句と文の関係を、分離動詞と助動詞構文でも確認しておきましょう。
分離動詞
動詞の後半部だけが移動します。前半部は文末に残り、動詞が2つに分離します。
助動詞構文
助動詞が2番目の位置に移動し、本動詞は文末に残ります。
なぜ日本語とドイツ語の語順が同じになるのか?
動詞の位置がポイントです。日本語の動詞は文末ですね。ドイツ語は最終的な文(表層構造)では動詞は2番目ですが、文になる前の不定句の段階では動詞は文末(←日本語と同じ!)です。この不定句がドイツ語の深層構造なので、ドイツ語のネイティブスピーカーの頭の中の深層構造では、動詞はいつも文末にあります。文の中心は動詞で、その他の語は動詞との結びつきの強さによって位置が決まるので、日本語でもドイツ語でも英語でも、動詞と関係の深い語ほど動詞の近くに置かれるのです。
不定句の形で日本語、ドイツ語、英語の語順を比べてみます。緑色の部分が動詞です。
↙︎動詞にとって一番大切な要素
★どの言語でも動詞の一番近くは目的語:「テニス」
動詞から一番離れた位置は時間関係の副詞:「今日」
↖︎なくても文が成立する
●動詞のパートナーが文末に置かれる理由
この不定句が文になると、人称変化した動詞(=定形)は2番目に移動して、Tennis が文末に残るので、動詞と Tennis は離ればなれになります。ドイツ語では「動詞と最も密接に結びつく要素は文末に置かれる」のですが、実はわざわざ動詞と離して文末に置くのではなく、深層構造では動詞とそのパートナーは隣同士だったのです。
●ドイツ語は深層では SOV 言語
ドイツ語と日本語は熟語や動詞句を示すとき、動詞を最後に置きます(sich für ... interessieren / …に興味がある)が、英語は動詞から始めます(be interested in ...)。つまりドイツ語と日本語は、動詞が最後にあるのが基本形なので、他の語の並び方も同じになり、英語は動詞が最初なので、他の語の語順がドイツ語や日本語とは逆になります。ドイツ語は表層では、[主語+動詞+目的語]という語順の(英語と同じ)SVO 言語ですが、深層では日本語と同じく、[主語+目的語+動詞]という SOV 言語です。動詞以外の語順が日本語と同じなのは日本人がドイツ語を学ぶ際の大きな利点ですから、ぜひ活用して下さい。